第1回 日本の植物に触れる芸術文化と生活に関する展示会

*english below


はじめに

この度、景勝横浜三渓園におきまして、『第1回 日本の植物に触れる芸術文化と生活に関する展示会』を開催することになりました。当団の活動では日本各地の「自然風土、生活技術、産材」のご紹介、「優良材生産意欲の向上」、「日本風土文化への貢献」を目的とした公益性をもった活動で、展示会の開催を継続的に活動することによって、伝統文化産業を持続可能にする情報発信や革新の機会創出の場としております。

今回は様式建築を舞台にした空間芸術としてプレゼンテーションいたします。現代科学技術を取り入れながら空間芸術として、古くから写し伝わる物語の造形化を試みました。そして三溪園にございます古建築「燈明寺本堂」を舞台に「地域・技術・素材」に着目して制作された作品とパネルや動画にまとめた記録を展示いたします。展示会場は京都と石川県の風土文化、技術と芸術の記録を紹介するパネルやビデオクリップと、現代科学技術を取り入れ何度も試みて出来上がった作品で構成されます。

タイトルについては大変悩みました故、世阿弥の著書「花伝書」に登場する句から拝借いたしました。 それは若い頃から老いるまでの芸道の道を書いたものですが、ちょうど中間地点にあたる50歳程度の年齢について書いた箇所です。「老いるほど何もしないこと以外に手立てがなくなってくるのですが、身についた花は枝葉が落ちて老い木となっても、花が散らずに残ったのである。これは自分が目の当たりにできた老骨に残った花の証拠と言えるのです。」こう書かれております。

皆様には展示会を通じて日本の古典作品や歴史建築を探訪しながら、終着点では日本の固有種の植物をご鑑賞いただきます。例えば能楽には五番立という様式がございますが、本来は「神・男・女・狂・鬼」というテーマに別れているものを、今回は庭園と外陣を一つの世界の連なりとするために五番立形式に5つの立体作品を充てました。内陣には、石川県珠洲の群生“藪椿”や室町時代に発祥した焼物、麻織物を設えました。このように庭園と古建築の全体を通して文化空間を創造し、各場所に設置した伝統革新の試みや地域に根ざした工芸や芸能を体感いただける展示会となっています。この機会が参加事業者を含む日本の伝統革新に通じるワンステップとなることを願っております。

長く続く伝統はその時々にふさわしい花を咲かせますが、それらは日々積み重ねられた「生」という営みや歩みの奇跡である、そのようなシンプルなことを持続的な平和な世界への提案として、皆様と共有できましたら幸いに存じます。